核兵器禁止条約発効:バチカン外務局長「共通善を目指して」
VATICAN NEWS
原子力の戦争目的の使用は倫理に反すると同様に、核兵器の保有も倫理に反する、と教皇フランシスコは、2019年11月24日、広島の平和記念公園で述べ、核兵器のない世界への思いを強調された。それから11ヵ月後の、昨年10月、核兵器禁止条約(Treaty on Prohibition of Nuclear Weapons 、TPNW)の批准国が50ヵ国に達し、同条約は今年1月22日より発効の運びとなった。バチカンの外務局長リチャード・ギャラガー大司教は、この条約についてバチカンのメディアに語った。
ギャラガー大司教は、2017年の核兵器禁止条約(TPNW)の採択までは、核兵器をはっきりと法的拘束力をもって禁止する国際条約はなかった、と説明。同条約の発効は、すでに禁じられている化学兵器や生物兵器など他の大量破壊兵器のカテゴリーの中に核兵器を明瞭な形で加えることになり、こうして核兵器は、恒常的にその使用と保有を非難され、正当化されない武器の中に入ることになった、これが、教皇庁がこの条約の発効のために取り組んだ理由の一つであると述べた。また、教皇庁はその起草プロセスにも積極的に参加したが、条項の多くは、直接・間接的に人間を中心に据え、人道的な規範、平和条約との密接な関係を思い起こさせる内容になっていると話した。
ギャラガー大司教は、多国間主義に対する圧力に抵抗し、疑念と不信の力学を克服するためには、政府関係者・非政府関係者による、皆の継続した取り組みが必要、と述べた。また、同条約で完全に認められたもう一つの重要な点は、平和を学び、核兵器の危険と現在と未来にわたるその影響など、様々な観点から軍縮への意識を向上することの大切さである、と語った。同大司教は、教育と意識向上も、核兵器のない世界を形作り、核兵器を拒否する文化、いのち・平和・いやしの文化を推進する上で大事や役割を負っている、と話した。
「威嚇」という観点から、今日の世界が直面する新型コロナウイルスによるパンデミックに触れた同大司教は、この危機は、わたしたちの安全に対する概念を再考させるものであった、と述べた。世界の平和と安全は、相互破壊や全滅への脅威や、権力バランスや力の法則を基礎とするものであってはならず、それは対話・連帯・正義・人間の統合的発展、基本的人権の尊重・環境保護・教育や医療システムの向上、人民間の信頼構築の上に築かれなければならない、と語った。
このような見地から核兵器の威嚇を越えていくことが必要、と述べた大司教は、核兵器のない世界の実現には、教皇フランシスコの回勅「ラウダート・シ」が説くような、統合的エコロジーにおける「すべては互いにつながっている」という意識に基づく構想が欠かせず、核兵器禁止条約はこうした方向性を持ったものである、と話した。そして、その構想は、見えない特殊な利害の保護ではなく、共通善をゆるぎない目的とする対話を通してのみ築くことができるだろう、と述べた。