検索

「地中海を再び平和の工房に」教皇、マルセイユのミーティングで

教皇フランシスコは、マルセイユで開催された地中海地域をめぐるミーティングに出席された。

 フランスのマルセイユを訪問中の教皇フランシスコは、9月23日、地中海地域をめぐるミーティングに出席された。

 このたびマルセイユで開催されたミーティング「ランコントル・メディテラネンヌ」(9月17日〜24日)は、講演や討議、文化紹介行事などを通して、地中海地域の多様で豊かな価値を再発見しつつ、今日の共通課題への一致した取り組みを励ますものとして、地中海に接する5地域(北アフリカ、バルカン半島、ラテン・ヨーロッパ、黒海、中東)の30都市から、司教ら教会関係者、市長ら行政責任者、また各地の若者たちが参加して行われた。

 地中海を取り巻く状況を見つめ、平和への道のりを探る国際ミーティングの開催は、イタリアのバーリ(2020年)、フィレンツェ(2022年)に次いで、今回で3度目。

 マルセイユ訪問2日目午前、教皇はパレ・ドゥ・ファロで開かれた同ミーティングの最終セッションで講演。

 このセッションには、マクロン仏大統領をはじめ、フランスの各界要人らも出席した。

 スピーチの中で教皇は、古い歴史、多様な構成と国際性を持つマルセイユの特性に触れながら、地中海の都市マルセイユが向き合う現実や希望、未来を「海」「港」「灯台」の3つのキーワードを通して考察された。

 多種多様な民族と文化によって構成され、60カ国の領事館を持つマルセイユを教皇は「希望のモザイク」「多様でありながら独自の街」と形容。その多様な世界との出会いが、この都市の歴史を唯一のものにしている、と話した。

 今日、地中海の歴史とは異なる文明と宗教と思想のぶつかり合いであるとしばしば耳にする、と教皇は述べつつ、諸問題に目をつぶることはできないが、民族間の交流が地中海を文明の揺籃の地としたことを忘れないようにと指摘。

 地中海は、アブラハムを父祖とする宗教間、ギリシャ・ラテン・アラブの各思想間、科学・哲学・法学など学問間の「出会いの空間」であるとする教皇は、地中海が世界において人間の価値を高め、真理に開き、救いを追求させたように、今日の紛争の海を前に、わたしたちは地中海を再び「平和の工房」とするためにここにいる、と話された。

 マルセイユの港には、何世紀にもわたり、海とフランスとヨーロッパに開かれた扉として、仕事と未来を求めて海外に旅立つ人々、また希望を求めてヨーロッパに上陸する人々が行き交い、その扉は閉じられることがなかった、と教皇は回想。

 それに対して、地中海に面した多くの扉は閉じられ、「侵略」「危機」という言葉が人々の恐怖を煽っている、と語りながら、教皇は「海で死にかけている人は、侵略ではなく、受け入れを求めている」と強調された。

 また、教皇はマルセイユの港と海を照らす灯台のイメージに重ねつつ、地中海地域の教会の航路を導き、教会共同体間の協力を促す、「地中海司教協議会」創設の構想に言及された。

 さらに、灯台の光のように、地中海の未来の航路を示す光とは若者たちである、と述べた教皇は、大学都市マルセイユの大学生約3万5千人のうち、その7分の1が外国人であることに触れ、文化間の交流にふさわしい場所として、地中海の諸大学が多様な文化の中で若者たちの出会いと成長を促す「夢の実験室、未来の工事現場」となるように、と希望された。

 教皇は地中海諸地域が、連帯をもって貧困に立ち向かう「善の海」、より良い未来を求める人々を抱擁する「受容の港」、暴力と戦争の暗い淵を出会いの文化の光によって断ち切る「平和の灯台」となるよう、力強くアピールされた。

23 9月 2023, 15:08