教皇、バチカン天文台で学ぶ学生らに励まし
教皇フランシスコは、6月20日、ローマ近郊カステル・ガンドルフォにあるバチカン天文台でサマー・スクールに参加する若者たちにメッセージをおくられた。
世界各国で天文学を学ぶ大学生、大学院生を招いて行うこのサマー・スクールは、1986年より2年毎に開催され、今回で18回目となる。新型コロナウイルスの影響で延期されたここ数年を経て、ようやく再開の運びとなった。
今年のスクールは、6月4日から30日まで、天文学・宇宙物理学を研究する世界の大学生・大学院生200名の候補の中から選ばれた、20か国を出身とする、24名の学生たちが参加して行われている。
教皇は参加者らへのメッセージで、旧約聖書の詩編にも見られるように、宇宙の広大さは常に驚きや畏れの源であった、と述べ、サマー・スクールに参加する21世紀の若い研究者たちが、この宇宙の広大さを抱擁し、それを理解するための種を見つける技術を発展させることができるようにと願われた。
また、教皇は若者たちの眼差しが天文学という窓の外を眺めるだけでなく、憐みや愛といった大切な現実を映し出す、他の窓を見つめることも忘れないようにと助言された。
「皆さんの研究、生活の中で決して驚きの精神を忘れないように。愛と真理に常に促されながら、皆さんに差し出されるあらゆる宇宙の断片に驚きを見出すことができるように」と、教皇はバチカン天文台のサマー・スクール参加者らを励まされた。
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バチカン天文台は、「グレゴリオ暦」の導入で知られる教皇グレゴリウス13世の在位中、1578年から1580年にかけて建設されたバチカンの「グレゴリアーナ塔(別名:風の塔)」を起源とする。
1774年、教皇クレメンス14世の時代、コッレージョ・ロマーノに当時としては本格的な天文台が設置された。
1870年、イタリア統一運動によりローマがイタリア王国に併合されたことで、コッレージョ・ロマーノの天文台は王立のものとなった。
その後、1891年、教皇レオ13世は、「風の塔」にバチカン天文台を再び設置。
ローマの街中の光によって次第に観測が難しくなり、1935年、ピオ11世により、教皇離宮のあるカステル・ガンドルフォに、新しい天文台が設けられた。
やがて、カステル・ガンドルフォにも光害の波は訪れたため、1980年代、米国アリゾナ州ツーソンのアリゾナ大学スチュワード天文台内にバチカン天文台研究グループが結成された。1993年、スチュワード天文台との協力で、グレアム山国際天文台にバチカン新技術望遠鏡が建設された。
現在、カステル・ガンドルフォの天文台は、バチカン天文台の本部として機能しながら、隕石の分析などの研究を続けるほか、世界の大学生や大学院生らを招くサマースクール、学会などを定期的に開催している。
また、同天文台は、天文学に関する歴史的な書籍や資料の研究でも知られている。