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バチカン国務長官、ピエトロ・パロリン枢機卿 バチカン国務長官、ピエトロ・パロリン枢機卿 

パロリン枢機卿「教皇のアイルランド訪問が希望のしるしとなるように」

ダブリンで開催中の「世界家庭大会」に参加のため、8月25日と26日の両日、教皇フランシスコはアイルランドを司牧訪問される。この訪問を控え、バチカン国務長官・ピエトロ・パロリン枢機卿にインタビューを行った。

バチカン国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿は、バチカン・ニュースのインタビューに答え、間もなく行われる教皇フランシスコのアイルランド司牧訪問をはじめ、8月21日からダブリンで始まった「世界家庭大会」や、教会内の未成年者虐待の深い傷などについて語った。同枢機卿は、教皇のアイルランド訪問は、皆の希望のしるしとなり、地方教会と世界の家庭に勇気を与えるだろう、と述べた。

(アレッサンドロ・ジソッティ - バチカン市国)

A.パロリン枢機卿、教皇フランシスコは「世界家庭大会」のためにアイルランドに行かれます。この「家庭」というテーマは、同教皇が常に中心としてきたテーマです。家庭をテーマにしたシノドスと、使徒的勧告「愛の喜び」の後、何が待たれるのでしょうか。

R.「世界家庭大会」を目的とした教皇のアイルランド訪問は、家庭についての教会の豊かな教えを再確認し、家庭の本質的な役割、家庭が教会と社会で占める立場と、愛と忠実を生き、命を伝え教える、その使命を支える機会となると思います。教皇の訪問は、神の愛を伝える家庭のミッション、今日の世界が探し求める幸福を生み出すことのできる家庭の力を励ますものとなるでしょう。

A.今日、キリスト教的家庭が教会に与えることのできる特別な貢献、また信仰体験を持たない人たちに与えられるものとは何でしょうか。

R.今日、家庭はとても重要な役割を負っています。それは先ほど言ったように、福音の喜びを生き、個人や共同体の生き方を変容する神の愛を喜びをもって証しする役割です。わたしたちが生きるこの時代、人々は孤独や孤立に苦しんでいます。人が互いに孤立し合うことは、最後には神からも自分を孤立させてしまいます。こうしたことから、教皇は家庭の役割を大変強調されるのです。家庭は、個人のレベルでも、共同体レベルでも、所属感と、交わりの精神、尊重の精神に人を目覚めさせます。わたしは、家庭は社会の中でこうした役割を果たすべきだと思っています。

A.ダブリンの大会では、移民、家庭の危機、同性愛者についてなど、センシティブなテーマにも向き合うことになると思いますが、教会は、今日、教会と意見や価値観を異にする人々に、どのように語りかけることができるでしょうか。

R.教会は当然、福音に基づいた教えと勧告を持っています。しかし、言葉だけでなく、模範と行いをもって、今日の世界に福音の素晴らしさと真理を証しする態度が、さらに重要だと思います。癒すべきたくさんの傷や、孤独、和解させるべき分裂がここにもあります。教皇がその登位直後から使われてきた「野戦病院」としての教会のイメージを思い浮かべてください。それは人々の本当に近くにいて、その成長の過程、傷の具合や、回復を見守ることです。わたしは、この寄り添いの態度とは、耳を傾ける能力、対話する能力、共に成長する能力だと思っています。

A.教皇は、家庭が制度上のふさわしい政策をもって支援されるようにと、たびたび訴えてこられました。家庭への支援はどのようなことから始めるべきとお考えですか。

R.教皇は、それをわたしたち自身から始めるべき、家庭自体、教会自身がまず積極的に取り組むべきと、使徒的勧告「愛の喜び」の中で述べています。これまですでに若い人たちの結婚の秘跡の準備、家庭の構築を助けてきただけでなく、それ以上の取り組みを呼びかけているのです。そして、当然、キリスト教共同体は、自分たちの証しと行いの側面にとどまらず、政治界に対し、家庭の現実に関心を向け、家庭が必要とすることに対し、ふさわしい法的対策をとるよう働きかける必要があります。

A.ローマ教皇が今回40年ぶりにアイルランドに戻ることになります。アイルランドは聖職者による未成年者の虐待の恐ろしい傷を体験しています。米国ペンシルベニアにおいても未成年者虐待の報告書の内容はショッキングなものです。アイルランドの神の民にどのように語りかけたらいいでしょうか。

R.人々はこの出来事に深い衝撃を受け、今現在も傷ついていると思います。これは教会の証しにおいても、破壊的な影響をもたらしました。教皇は常に、わたしたちが一番優先すべきことは、被害者に寄り添い、彼らがその人生を再構築できるように助けることであると強調されてきました。アイルランドの教会は、自分たちの怠りと過ちと罪を認めると共に、このような残酷で恐ろしい出来事が繰り返されないように、一連の対策を講じてきました。教皇のアイルランド訪問が、特に希望のしるしのもとに行われることを信じます。この希望する力、信頼する力は、まさに解放し、変容し、救う、神の愛の力によるものです。そして、人はその神の愛の力を、家庭の中でも体験しています。教皇の訪問は、常にアイルランドとその国民の特徴であった信仰を、未来に向けて開かせるメッセージともなるでしょう。その信仰は、心を再生させ、平和と幸福の実を結ばせることでしょう。

22 8月 2018, 15:08