聖金曜日:教皇の黙想と共に、コロッセオで十字架の道行

キリストの受難と死を記念する「聖金曜日」の夜、教皇フランシスコによる黙想テキストと共に、ローマのコロッセオで十字架の道行が行われた。

 3月29日(金)夜、ローマ市内のコロッセオで、聖金曜日の十字架の道行がとり行われた。

 この日は強い風が吹く一日となったが、夕方、聖ペトロ大聖堂で「主の受難の儀式」をとり行なった教皇フランシスコは、聖土曜日の復活徹夜祭と復活の主日の行事に備えて健康状態を良好に保つために、夜はバチカンのサンタ・マルタ館から十字架の道行に参加された。

 教皇は、昨年の聖金曜日も、気温の低下のためにコロッセオには赴かず、バチカンから会場の参加者と心を合わせ十字架の道行を行われている。

 教皇の直接的な参加なしで行われた今年の十字架の道行であったが、コロッセオに集った信者らは教皇の存在を特別身近に感じることができた。それは、今年の十字架の道行の黙想テキストが、教皇フランシスコ自身によって記されたものだったからである。

 聖金曜日のコロッセオでの十字架の道行には、黙想のためのテキストが用意され、年ごとに異なる執筆者らによって、多様なテーマ、視点を持ったテキストが書き下ろされてきた。

 来年2025年の聖年を前に、教皇は2024年をその霊的準備のための「祈りの年」と宣言された。こうした背景のもと、教皇は祈りの豊かさを人々に再発見してもらうために、今年、十字架の道行の黙想テキストを自ら準備された。教皇フランシスコ著の十字架の道行の黙想テキストは、今回が初めてのものとなる。

 『十字架の道行をイエスと共に、祈りのうちに』と題されたこの黙想の導入で、教皇は「主イエスよ、あなたの十字架を見つめ、あなたがわたしたちのためにすべてを差し出されたことを知ります。わたしたちはこの時間をあなたに捧げます。ゲツセマネからカルワリオまで祈られたあなたのそばで、この時間を過ごしたいと思います。この祈りの年、わたしたちはあなたの祈りの歩みに一致します」と述べている。

 そして、教皇はイエスの死刑宣告から、十字架上の死、埋葬まで、十字架の道行の14の過程(留)をイエスと共に歩みつつ、それぞれの場面を心の目で見つめ、イエスと内的対話を行いながら、問い、思いを述べ、自己を省み、祈りを投げかけている。

 たとえば、第一留 「イエス、死刑を宣告される」では、教皇は「イエスよ、いのちであるあなたが、死刑を宣告された。真理であるあなたが、偽りの裁判を受けている。なぜ、抗議しないのですか。なぜ声を上げ、あなたの正しさを説明しないのですか。[…]イエスよ、決定的なこの瞬間に、あなたは話さず、沈黙する。それは、悪が強ければ強いほど、あなたの答えは徹底的だからだ。あなたの答えは沈黙だ。だが、あなたの沈黙は豊かだ。それは祈り、柔和さ、赦し、悪からの解放の道、苦しみを恵みに変える道。イエスよ、わたしはあなたをよく知らないことに気づいた。なぜなら、あなたの沈黙をよく知らないからだ。[…]イエスよ、あなたの沈黙はわたしを揺さぶる。それはわたしに、祈りは唇を動かすことから生まれるのではなく、耳を傾けることを知る心から生まれるのだと教えてくれる。祈りとはあなたの御言葉に従順になること、あなたの現存を礼拝することだからだ」と記す。そして、「イエスよ、わたしの心に話しかけてください」と祈りを繰り返している。

 この夜、コロッセオ周辺には、およそ2万5千人の信者が集い、教皇の言葉に聞き入り、その黙想を共に味わいながら、十字架の道行を行った。

 最後に、ローマ教区教皇代理司教アンジェロ・デ・ドナーティス枢機卿による祈りをもって、聖金曜日のこの伝統行事は終了した。

29 3月 2024, 23:45