「教育のためのグローバル・コンパクト」会議にメッセージをおくる、教皇フランシスコ 「教育のためのグローバル・コンパクト」会議にメッセージをおくる、教皇フランシスコ 

教皇「全社会参加の新しい教育への取り組みが必要」

ローマのラテラン大学で開かれた、教育のためのグローバルな協定の再構築を考える集いに、教皇フランシスコはビデオを通して参加された。

 人間と教育の関係を見直し、教育のための新しいグローバルな協定づくりを考える集い「教育のためのグローバル・コンパクト」が、10月15日(木)、教皇庁教育省の主催で、ローマの教皇庁立ラテラン大学で開かれた。

 教皇フランシスコは、2019年9月、地球の未来と若い世代のために、グローバルな教育的協定の再構築をテーマにした国際イベントの開催を望まれた。

 この催しは、様々なプログラムと共に、2020年5月14日に予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のために今秋に延期され、今月15日、ラテラン大学をメイン会場にオンライン・ミーティングの形式で行われた。

 教皇はこの集いで、ビデオを通し関係者にメッセージをおくられた。

 この中で教皇は、「教育のためのグローバル・コンパクト」の集いに向けて準備を呼びかけた時は、その後パンデミックによって引き起こされたこのような状況はとても想像できなかった、と述べた。

 新型コロナウイルス感染症による保健衛生上の危機は、やがて経済・社会の危機をもたらし、世界の教育システムは、学校からアカデミックな分野に至るまで、大きな困難にさらされた、と教皇は話した。

 教育やテクノロジー上の機会の不平等はもとより、登校制限や様々な不自由によって、多くの児童・生徒が本来あるべき成長過程から取り残されている状況に教皇は憂慮を表明。

 いくつかの国際組織の最近のデータが示す、2億5千人以上の就学児童が、遠隔学習にアクセスできず、教育の機会から締め出されているという状況、さらに、およそ1千万人の児童が、新型コロナウイルスによる経済危機で、就学を断念せざるを得ないという現実は、「教育的大惨事」とも言われるもの、と語られた。

 教育とは「希望の行為」と述べた教皇は、教育は人々の協力を促し、不毛な論理や無関心から来る麻痺を、受容、世代を超えた連帯、超越的な価値を基礎とする新しい文化の論理へと変容させる、と話した。

 また、教育は、世界と歴史をより人間的なものとするための、最も効果ある道の一つであると共に、それは、次世代への愛と責任の問題でもある、と述べた。

 今日、新しい世代の叫びに耳を傾け、社会の不正義や権利の侵害から目を背けない姿勢をもって、家庭・学校・行政機関・宗教・政治など、全社会参加の、新しい教育への取り組みが必要とされている、と教皇は強調された。

 こうした中、教皇は、文化・学術・スポーツ・芸術・メディアなど、様々な分野の関係者に、この教育的イニシアチブに積極的に参与し、それぞれの証しや仕事を通して、いたわり・平和・正義・善・美・他者の受容・兄弟愛などの価値の推進者となるようアピールされた。

 そして、教皇は、個人そして社会全体で取り組むべき教育上の課題として、次のような目標を掲げられた。

 ・あらゆる教育プロセスの中心に、人間とその価値・尊厳を据え、一人ひとりの個性、素晴らしさ、唯一性を際立たせると共に、「切り捨ての文化」の蔓延の原因となる生活スタイルを拒否し、自分を取り巻く他者や現実と関わりを持てる力を育てる。

 ・児童・青少年の声に耳を傾けると同時に、価値や知識を伝え、正義と平和の未来、すべての人の尊厳ある生活を共に構築する。

 ・女子児童・生徒の教育への完全なアクセスを推進する。

 ・家庭の中に、教育の第一かつ不可欠の主役としての役割を見出す。

 ・最も弱く疎外された人々に自分を開くことで、受け入れの精神を教え、また自ら学ぶ。

 ・統合的エコロジーの観点から、全人類に真に奉仕するために、経済・政治・成長・発展などをめぐり、新たな思考方法を持てるよう、学ぶ努力をする。

 ・補完性原理(サブシディアリティ)・連帯・循環経済の原則に沿って、地球を資源の搾取から守り、より簡素な生活スタイルを選択し、リサイクル可能で人間環境・自然環境に配慮したエネルギーの完全利用を目指しつつ、わたしたちの「共通の家」を守り育てる。

 このような目標を示された教皇は、「教育の中に希望と平和と正義の種が息づく」という信念を支えに、今、勇気と希望を持って未来を見つめるよう、皆を励まされた。

15 10月 2020, 18:55