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大阪・関西万博:「バチカンの日」にパロリン枢機卿が挨拶

バチカンの国務長官、ピエトロ・パロリン枢機卿は、大阪・関西万博のバチカンのナショナルデーのために日本を訪問した。

 ローマの保護者、使徒聖ペトロ・聖パウロの祭日、6月29日に、大阪・関西万博( Expo 2025 Osaka, Kansai, Japan)で、バチカンのナショナルデーが開催された。

 バチカンの国務長官、ピエトロ・パロリン枢機卿は、このナショナルデーのために日本を訪問。万博会場で開かれたセレモニーに代表として出席した。

 このセレモニーでは、バチカン市国と日本の国旗の掲揚と、両国の国歌の演奏に続き、伊藤良孝万博担当大臣が挨拶を述べた。

 パロリン枢機卿はバチカンのナショナルデーに際しての言葉で、「教皇レオ14世に代わり、またわたくしからも、尊敬する日本の皆様のご多幸をお祈りすると共に、この国に住むすべての人々に繁栄と平和の恵みを心より祈念申し上げます」と挨拶をおくった。

 同枢機卿は、今年記念される、日本と教皇庁の関係の長きにわたる歴史を示すいくつかの出来事を挙げつつ、1555年、鹿児島のベルナルドの教皇パウルス4世への、日本のカトリック信者として初めてのローマ教皇への謁見から470周年、また、3月には、日本初のヨーロッパへの使節団である天正遣欧使節のローマ到着と教皇グレゴリウス13世への謁見から440周年、さらには、1615年の慶長遣欧使節の教皇パウルス5世への謁見から410周年を迎えることを紹介。

 これらの初期の歴史的な出会いは、時代の試練に耐えてきた両国の関係の始まりをしるすものと述べながら、今後もこの関係がさらに深まることを期待した。

 80年以上前の、日本とバチカンの正式な国交樹立によって強化された関係は、わたしたちの多くの共通の価値観と実りある協力によるもの、とパロリン枢機卿は指摘。

 中でも平和と安定、そして軍備の無秩序な広がりを抑えるための共通の努力は、両国双方にとっての優先事項であると述べながら、特に今年は広島と長崎への原爆投下から80年を迎えることを忘れてはならないと、平和への思いをいっそう深めた。

 バチカンのパビリオンのテーマ「美」と「希望」は、このような共通の価値観に基づくと共に、今日の世界情勢においてわたしたちが非常に重要と考えているものである、とパロリン枢機卿は述べた。

 「美」と「希望」はカトリック信者にとって本質的な価値観であるが、それは、そこに歴史におけるキリストとそのわざが映し出されているためである、と語った。

 わたしたちにとって、キリストは神的美しさの最も偉大な表現であり、それは単なる外見を超越した、人々の心と魂に触れる美しさである、と同枢機卿は強調。

 同時に、キリストは人類の希望でもある。なぜなら、キリストはその生涯と死を通して、全人類に救いと再生の道を開いたためである、と話した。

 わたしたちの世界、社会、家庭に、この真の美しさがどれほど必要とされていることだろうか、と同枢機卿は問い、今日の偉大な技術的功績、経済・金融の進歩をもってしても、わたしたちの共通の生活に完全な意味を与えるには足りない、と述べた。

 「美しいものに心を奪われて立ち止まることを知らない人が、平然とあらゆるものを利用し、濫用の対象物として扱ったとしても、驚くにはあたりません」という教皇フランシスコの言葉(『ラウダート・シ』215)を引用しつつ、人間社会では、まだ見出し得る美を大切にすることが、これまでになく急務となっている、と語った。

 次にパロリン枢機卿は、この「美」の意味と密接に結びつくものとして、「希望」のテーマを提示した。

 キリスト者にとって、神における信頼と人類への愛に根ざした希望は、個人的な成功に対する望みに限定されず、共通善のための具体的な取り組みへと変換される、と同枢機卿は話し、ここでも、教皇フランシスコの「希望は、間違ったことに憤り、それを変える勇気を見出すよう、わたしたちを招きます」(2024年度主の降誕・説教)という言葉を示した。

 今日ほど希望の徳が必要とされる時代はない、と述べたパロリン枢機卿は、多くの紛争と巨大な地球規模の諸問題に特徴づけられた時代において、未来が期待される以上に、恐れられている中、希望の中にこそ、わたしたちは恐れからの解放と、献身と行動への励ましを見出すことができる、と話した。

 パロリン枢機卿は最後に「橋を架け、対話し、手を携え『武装しない、武装を取り除く平和、謙遜な、忍耐強い平和』呼びかける、教皇レオ14世の選出の日のメッセージ(最初の「ウルビ・エト・オルビ」2025年5月8日)を掲げ、この挨拶を終えた。

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 パロリン枢機卿の挨拶の後、バチカンのナショナルデーを記念するコンサートが行われ、西本智実氏による指揮で、長崎、広島、大阪の児童・学生が参加する合唱団をはじめ、ソリスト、オーケストラを合わせ、総勢150名を超える人々と共に、モーツァルトの《戴冠式ミサ ハ長調 K.317》が演奏された。

 パロリン枢機卿は、同日午後、大阪のカトリック玉造教会(​大阪高松カテドラル聖マリア大聖堂)で、日本の司教たちとミサを司式した。

バチカンのナショナルデーを記念するコンサート 2025年6月29日 大阪・関西万博
バチカンのナショナルデーを記念するコンサート 2025年6月29日 大阪・関西万博

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 バチカンの国務省が28日X(旧ツイッター)で伝えたパロリン枢機卿の日程によれば、同枢機卿は6月30日には、東京に移動し、東京カテドラル聖マリア大聖堂でミサを捧げるほか、石破茂首相との会談を行う。また、同枢機卿への、寬仁親王妃信子殿下(30日)、秋篠宮文仁親王殿下(7月1日)の御接見が予定されている。

 パロリン枢機卿は、7月1日に日本を発ち、同日バチカンに帰国する。

 

29 6月 2025, 15:22