教皇、ウクライナの若者たちとビデオで対話
教皇フランシスコは、2月1日、バチカンのサンタマルタ館からビデオを通してウクライナの若者たちと対話された。
このオンライン・イベントは、駐ウクライナ教皇大使クルボカス大司教と、ウクライナのギリシャ典礼カトリック教会のシェフチュク首座大司教によって企画されたもの。
教皇との対話のために、キーウをはじめ、ルツク、ドネツク等の教区や、ワルシャワ、ミュンヘン、ロンドンなどヨーロッパの諸都市、また、米国シカゴ、カナダ・トロントの他の都市から、ラテン典礼およびギリシャ典礼カトリック教会に属する、約250人のウクライナの若者たちが参加した。
シェフチュク大司教は冒頭で、「ローマの教皇とウクライナの若者たちの歴史的な出会い」に挨拶をおくる一方、「空襲警報が鳴った時は、中継を止めて地下に降りること」などの注意も述べた。
ビデオを通したこの対話では、戦場に行った兄や他の兵士のために祈る青年、暴力や破壊に傷つきながらも、未来への望みを持ち、正当で恒久の平和を心から願うドネツクの若い女性、罪のない身近な人々を爆撃で失ったハルキウの女性ら、若者たちによる証言が行われた。
この後、若者たちと教皇による質疑応答の形をとった対話が続いた。
ウクライナ西部ウジュホロドの小教区の学校で英語を教える女性は「祖国のために死ぬことには意味があるか。いのちの価値が低下している世界で、いのちのための戦いにおいてどのように信仰を育むことができるか」と教皇に質問した。
「今日いのちは軽んじられている。お金や戦争で有利な立場をとることが優先され、いのちは一番の優先ではなくなっている」、「戦争とは常に破壊だ」と述べた教皇は、それに対抗できるのは「対話」であると述べ、「自分たちの間はもとより、自分たちと反対の立場にいる人たちとも対話しなくてはならない。平和は対話で築かれる」と話された。
また、ポーランドのワルシャワで他の多くのウクライナ人と共に避難生活を送る女性は、「これらの悲劇の中でどうしたら信仰を失わずにいられるか」と教皇に問いを向けた。
「祖国への思いは一つの力である」と述べた教皇は、海外にいるウクライナ人たちに「祖国への郷愁を失わないように。辛いことが多くても、前に進もう」と励まされた。
シカゴで暮らす女性は、「現代のヘロデ」から逃げた多くの避難民の子どもたちに触れ、「戦争の苦しみと不正義の中で、どうしたら赦すことができるのか。また、どうしたら子どもたちに赦すことを教えられるのか」と問いかけた。
教皇は「わたしにとってもだが、赦すことは最も難しいことの一つである」と述べつつ、「しかし、自分が赦されたように他者をも赦さなければならない、という言葉に助けられている」と語られた。
そして、「各自が、人生の中で自分がいかに赦されたかを考えなくてはならない」、「赦すことはとても難しい。わたしたちはいつも戦争し、拳に対し拳で返してしまう。しかし、わたしたちは常に赦し合わなくてはならない」と強調された。
教皇はビデオを介したこの対話の中で、戦死したウクライナの若い兵士が持っていた小さな聖書とロザリオをいつもご自分の机の上に置き祈っていると語り、「祖国のために命を捧げた若者たちのことを忘れないで欲しい」と願われた。