検索

教皇「核の脅威の下では全員が敗者」駐バチカン外交団との集い

教皇フランシスコは、駐バチカン外交団と新年の挨拶を交換された。

 教皇フランシスコは、1月9日、駐バチカン外交団に年頭の言葉を述べられた。

 この朝、バチカンの祝福の間で行われた新年の挨拶交換には、バチカンと外交関係を持つ国々・組織の大使・使節が一堂に集った。

 現在、バチカンと外交関係のある国は183カ国。これらに、欧州連合とマルタ騎士団が加わる。

 教皇は外交団に向けた言葉で、分裂と戦争が広がる世界にあって、今年が平和の希求の年であることを願われた

 この機会に教皇は、大使らが代表するそれぞれの国の国民と政府に挨拶をおくると共に、名誉教皇ベネディクト16世逝去の際に、各国の当局が寄せた弔意と寄り添いに感謝を表された。

 教皇は、昨年の教皇庁と各国の外交関係上の動きとして、新たに4カ国がバチカンとの外交のためにローマ駐在の大使を任命したこと、サントメ・プリンシペ民主共和国、カザフスタン共和国と、新たな二カ国間合意の署名が行われたことを挙げた。

 こうした中、教皇は、尊重的かつ建設的対話のもとに、教皇庁と中華人民共和国が2018年9月22日に北京で締結した司教任命をめぐる暫定合意を、さらに2年延長することで一致したことに触れ、この関係がカトリックの教会生活と中国国民の善への寄与を促すことができるようにと述べられた。

 聖ヨハネ23世の回勅「地上に平和を」の発表(1963年4月)から、今年で60年を迎えることを紹介しつつ、教皇はこの回勅が書かれた背景には、核戦争の危険を引き起こした1962年10月のキューバ・ミサイル危機の生々しい記憶があったと説明。この時、核兵器の破壊力の影響を自覚し、対話を優先しなかったならば、人類は全滅の一歩を記していただろう、と話した。

 しかしながら、今日いまだに核の脅威は回避されず、世界を恐怖と不安に陥れている、と述べた教皇は、「核兵器の所有は倫理に反する」、「核兵器による脅しの下では、いつもわれわれ全員が敗者である」と明言された。

 教皇は特に「イラン核合意」が中断していることを懸念、より安全な未来のために、一刻も早い具体的解決を願った。

 今日、グローバル化した世界で第3次世界大戦が進行している、と話す教皇は、世界の特定の地域で発生している様々な戦争が、事実上、すべての人々を巻き込んでいると指摘。その最も近く、かつ最近の例として、ウクライナにおける戦争の死と破壊を見つめられた。

 教皇は、戦争は、特に子どもや高齢者、障害者など、最も弱い立場の人々を苦しめ、家族を引き裂き、周辺地域はもとより、ヨーロッパ外にも影響を及ぼし、特にアフリカや中東のエネルギーや食料生産に影響を与えていると述べ、この意味のない戦争を直ちに止めるようアピールされた。

 他の緊張と紛争の舞台として、教皇は、再生のための改革が必要なシリア、パレスチナとイスラエル間の暴力の増加により多くの犠牲者と相互の不信を生じさせている聖地に言及。

 特にエルサレムが「平和の都市」として、出会いと平和的共存の場所・シンボルとなり、聖なる場所におけるアクセスと宗教の自由が保証されることを願うと同時に、イスラエルとパレスチナが二国家解決の実現に向けた直接対話において勇気と決断を見出すことができるよう励ました。

 また、教皇は今月末に訪問するアフリカ2カ国について、コンゴ民主共和国では東部における暴力の停止と、安全と共通善のための対話を呼びかけ、また、英国国教会のカンタベリー大主教とスコットランド国教会議長と一緒に訪れる南スーダンでは、人々の平和の叫びに声を合わせ、国内の和解プロセスに役立ちたい、と抱負を述べた。

 教皇は、未解決紛争の重い影響が続く南コーカサスの状況に、停戦合意の遵守と、捕虜の兵と市民の解放が、和平への道標となることを望んだ。

 さらに、教皇は、停戦が続く一方で地雷で多くの市民が命を落としているイエメンや、和平の進展が期待されるエチオピア 、テロに苦しむアフリカ東部などへの憂慮や関心を示した。

 アジアに目を向けた教皇は、すでに2年間、暴力と苦しみと死を体験しているミャンマーが対話に向けて歩み出せるよう、国際社会の支援を呼びかけた。

 また、教皇は、朝鮮半島について、長く待たれる平和と朝鮮半島のすべての人々の繁栄を築くための、調和への善意と努力を願われた。

 すべての紛争が、しばしば力による均衡に基づく平和を理由に、新しい武器の生産に頼り続け、その結果致命的な余波を招いていることを教皇は指摘。

こうした論理を取り除き、統合的な軍縮を進める必要を強調しながら、「死の道具が氾濫する場所に平和はない」と語られた。

 そのほか、教皇は、聖ヨハネ23世の回勅「地上に平和を」が説くように、平和のための4つの基礎として、真理、正義、連帯、自由を提示。

 これらの基礎に照らしながら、人権の尊重や、いのちの擁護、死刑制度の廃止、家庭や子を持つことを恐れる傾向、統合的教育の必要、宗教の自由、他文化との出会いと対話、移民問題、経済と労働、環境保護、政治社会の分極化など、多岐にわたるテーマ・課題に関心を呼びかけられた。

 

09 1月 2023, 19:07