「兄弟に振り上げた手を止めてください」教皇、十字架の道行で祈り
キリストの受難と死を記念する「聖金曜日」4月15日夜、教皇フランシスコは、ローマ市内のコロッセオで、十字架の道行をとり行った。
十字架の道行きは、イエスの死刑宣告から、十字架上の死、埋葬までの過程を、14場面(留)に分け、黙想しつつ行う信心業。
コロッセオ周辺の遺跡地帯を背景とする十字架の道行は、ローマにおける聖金曜日の伝統行事であるが、一昨年と昨年はパンデミックの影響のため、バチカンの広場で関係者を除きほぼ無人の状態で行われていた。
2年ぶりに再開されたコロッセオでの十字架の道行には、およそ1万人以上の信者たちが集い、教皇と祈りを共にした。
毎年、黙想を助けるためのテキストが用意されるが、今年は「家庭」をテーマに、家庭支援の共同体やボランティアの人々がその執筆を担当した。
十字架の道行には、このテーマに合わせ、若い夫婦や高齢者の夫婦、信徒宣教者の家族や、子息が奉献生活者となった家庭、里親の家庭、養子がいる家庭、病気と闘う家庭、移民の家庭など、多様な家族が参加。これらの家族はそれぞれ一留ごと十字架を掲げて歩き、家庭の様々な問題を十字架の下に託して祈った。
イエスの死の場面、第13留では、ウクライナ出身の女性とロシア出身の女性が手を添え合い一つの十字架を掲げた。二人の女性は同じ大学病院の同僚であり、また友人同士であるという。ここでは黙想テキストは朗読されず、「死を前に、沈黙は言葉より雄弁です。沈黙のうちに、それぞれが心の中で世界の平和を祈りましょう」との招きにより、広大な会場は祈りの沈黙に包まれた。
十字架の道行の終了後、
「父として、わたしたちの手をとってください。
わたしたちがあなたから離れないように。
わたしたちの背きの心をあなたの心に変えてください。
平和の計画に従うことを学ぶことができるように。
敵対する人々が手を取り合えるようにしてください。
相互の赦しを味わうことができるように。
兄弟に対して振り上げた手を止めてください。
憎しみのあるところに調和が花開くように。」
と、教皇はいつくしみ深い神に祈りを上げられた。