「心の耳で聞く」2022年度「世界広報の日」教皇メッセージ
ジャーナリストの保護者、聖フランシスコ・サレジオ司教教会博士を記念した1月24日、教皇フランシスコは「第56回世界広報の日」に向け、メッセージを発表された。
カトリック教会の「世界広報の日」は、様々なメディア(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ・映画・インターネットなど)を通して行う福音宣教について、教会全体で考え、祈ることを目的としている。毎年、聖霊降臨の直前の日曜日(2022年度は5月29日、ただし日本の教会では復活節第6主日、5月22日)に行われる。
今年の「広報の日」のテーマは、「心の耳で聞く」。昨年の「来て、見なさい」に続き、教皇はコミュニケーションの基本、真の対話の条件である、「聞く」ことの重要さを示された。
わたしたちは目の前にいる人にだけでなく、日常生活や社会の様々な出来事に対して、耳を傾ける力を失いつつある、と教皇は指摘。
心のケアで知られるある医師は、人は「誰かに聞いてもらいたい、という果てしない願望」を持っていると言った。耳を傾けてもらいたいという人々の思いは、しばしば秘められたものでありながらも、教師や、司牧者、広報・社会・政治関係者など、すべての人たちに向けられている、と教皇は述べた。
神と人との対話は、神が人に話しかけ、人が耳を傾け答える、ということから始まった。実際、傾聴とは、神の謙遜なスタイルに合致するものである。
神は人を愛し、言葉をかけ、その声を聞こうと耳を傾けるが、人はそれとは反対に、関係から逃れ、相手に背を向け、耳を塞ぐ傾向にある。
耳を傾けることへの拒絶は、しばしば他者に対する攻撃性さえ生む、と教皇は記し、「使徒言行録」中の、人々が聖ステファノの説教に耳を塞ぎ、石を投げつける場面を思い起こされた。
教皇は、イエスが弟子たちに「どう聞くべきかに注意しなさい」(ルカ8,18)と、深い傾聴と洞察の重要さを教えると共に、「立派な善い心」で御言葉を聞く人たちが人生の実りと救いを得ることができる(同8,15)と説いている点に注意された。
また、教皇は、聖アウグスティヌスの「耳に心を持つのではなく、心に耳を持ちなさい」という言葉や、アッシジの聖フランシスコが兄弟たちに「心の耳を傾けるように」と励ましていたことを紹介された。
教皇は、傾聴とは反対のものとして、ソーシャルメディアの中にしばしば見られるような、自分の興味のために相手を探る、利用する態度、また、相手を押しのけて自分ばかりが話したがる姿勢などを挙げられた。
わたしたちは多くの場合、対話の中で交わりがなく、自分の意見を言いたいがために、相手が話し終わるのを待っているだけである、と教皇は言い、こうした態度は対話ではなく、二人で言い合う独り言である、と述べている。
人々の間で、教会の中で、多くの声を互いに聞き合うことで、わたしたちは識別の力を鍛え、それによって皆の声を調和させる方向に持っていくことができる、と教皇は記している。
司牧活動の中で一番大切なものは、「耳の使徒職」であると教皇は強調。人に耳を傾けるために、自分の時間を無償で捧げること、これこそ最初の慈愛の態度である、と説いている。
教皇は始まったばかりのシノドスの歩みが、互いに耳を傾け合うための大きな機会となることを願われた。